(前回からの続き)
筆者は耳に届くEAの評判があまりに悪いことに居ても立ってもいられなくなり、周りにいるEAプロジェクトの関係者に本当のところを確認しに行きました。数多くの似非EA(EAという名の単なるドキュメント生産活動)に遭遇したのはその時でした。
霞ヶ関関係者がボヤきます。
「偉い人たちが決めた無茶なスケジュール通りにEAをやらないといけない」
「でもこれまでEAなんてやったことないから、我々もベンダーも勝手がわからない」
「慣れないことやるからスケジュールなんてどんどん遅延していく」
「既存のシステムへの投資は凍結、新規にやりたいことが全くやれなくなった」
「ベンダーにEAを委託したらキングファイル数十冊納品された。これどうするの?」
等々、つつけばつついただけ”EA”に巻き込まれて大変な目に遭ってるという恨み節ばかりが聞こえてきます。
確かに当時の実務者たちは(官も民も)一様に元気じゃありませんでした。官側は計画の遅延と思い通りに仕事をしないベンダーに、ベンダー側は過酷な労働と膨れ上がるコストに、すっかり疲弊していた観がありました。よくあるデス・マーチの光景です。これは確かに「EAが巻き起こした悲劇」と言えなくもありません。
実はこの光景、筆者が担当していた省庁に限った話ではなかったようで、他のどの省庁でも概ね似たような状況に陥っていました。
その理由は実に単純明快でした。”EAガイドライン”なるものが政府主導で上梓されており、どの省庁もこれに倣ってEAに取り組むことになっていたからです。
上述の納品物がキングファイル数十冊、というのも実は”EAガイドライン”に端を発しており、以下のドキュメントをAsIsとToBeで作ることが明記されていたのです。
・業務説明書
・機能構成図(DMM)
・機能情報関連図(DFD)
・業務流れ図(WFA)
・情報体系整理図(UMLクラス図)
・実体関連ダイアグラム(ERD)
・データ定義表
・情報システム関連図
・情報システム機能構成図
・ネットワーク構成図
・ソフトウエア構成図
・ハードウエア構成図
そもそも規模の大きな業務システムがEAの実施対象ですので、作らなければならないドキュメントは大変なボリュームになります。
またこれはEAですので、あるドキュメントに登場する要素が別のドキュメントにも登場したり、全く別の要素に関連性を持っていたりと、その内容は複雑に絡み合った性質を有しています。ですからEAのアウトプットとなる上述のドキュメント群は、複雑さに対して全体の整合性がきちんと担保されていなければなりません。
つまりこれらの大量のドキュメントは非常に高い精度で作成されていなければならないのです。キングファイル数十冊分というだけ、それがとてつもなく険しい道のりであることがお分かりいただけるかと思います。
(次号 EAが巻き起こした悲劇 ③ に続きます)
※前回までのリンク
EAコラム(1) みなさん元気にEAやってますか?
http://www.ariscommunity.com/users/hide-char/2010-08-25-ea-1-ea
EAコラム(2) EAが巻き起こした悲劇 ①
http://www.ariscommunity.com/users/hide-char/2010-09-03-ea-2-ea